SDGsの達成をはじめ、
今後はCSV経営が企業の
命運を分ける。
SDGsは「持続可能な世界」を実現するための目標ですよね。そこで今回は、まず(株)AOKIが「企業としての持続可能性」についてどのように考えているのか、森社長のほうからお話しいただけますか。
森
-
我々AOKIグループは、「人々の喜びを創造する」というグループコンセプトを掲げています。AOKI・ORIHICAは、本年65周年を迎えましたが、この先70年、100年、ファッションを通じて人々の喜びを創造し続けるためにはどうすればいいか。長年、成功を続けているさまざまな企業の経営者が必ず言うのは、「CS(Customer Satisfaction=顧客満足)」を高めることです。それによって利益が上がり、企業が存続できることは間違いありません。
森 裕隆
代表取締役社長しかし、そもそもCSを高めるためには…? という疑問に、私たちが辿り着いた答えは、「ES(Employee Satisfaction = 従業員満足)」を高めることでした。従業員満足度が高い企業は、生産性や顧客満足を追求するモチベーションが高く、結果として利益アップにもつながります。
その利益を従業員にしっかり還元することで、またさらにESが高まっていく…。こうしたスパイラルアップを続けていくことが、企業として持続するために重要であると考え、近年は特にES向上に力を入れています。
「企業経営」と「SDGs」は、特に環境面で相反しがちな難しさがあると思うのですが、両立を目指すことへの使命感や手応えは。
立川
-
確かに、サステナブル素材を使うと商品価格が上がってしまうなど、相反する部分はあると感じます。しかし、一方で世界の現状を考えると、SDGsへの取り組みは「待ったなしの状況」であると思います。これからの時代は、事業を通じて社会課題を解決するという「CSV経営」をいかに実現するかが企業の命運を分けるでしょう。
立川 延之
取締役専務執行役員
経営戦略担当
小出
-
お客様の意識も変化してきています。特に若い世代の方々は、早くから環境問題などについて学んでいるので、SDGsへの高い意識をお持ちです。商品担当の私としては、今後そういった方々が購買層の中心になっていくことで、少し値段が高くても地球環境に貢献できるなら…と、消費行動が変わっていくことを期待しています。
もちろん私たちも、商品の背景にあるストーリーを積極的にお客様に伝え、啓蒙していく努力が必要だと考えています。小出 大二朗
取締役執行役員
兼 商品本部部長
そのためにも、今回のような「SDGsサイト」が必要だということですね。
立川
-
その通りです。これまではSDGsに合致することに取り組んでいても、その内容や趣旨が社内外に正しく伝わっていないという課題がありました。そこで2023年、私が統括者となって「SDGs推進プロジェクト」をスタートさせ、コーポレートサイトやブランドサイトとは一線を画した「SDGsサイト」を立ち上げることになりました。
ステークホルダーの皆様にご覧いただきたいのはもちろんですが、就職希望の新卒者は必ず各社のサイトを見ます。その際にAOKIグループ全体のSDGsへの考え方や取り組みだけでなく、我々がファッション事業を通じて何をしているのか、具体的に訴求することが優秀な学生と接点を持つためには不可欠であると考えました。
河野
-
私は人事担当なのですが、正直、新卒者向けのサイトでもSDGsに関する取り組みは発信できていませんでした。でも、実は今、私の息子が大学生で就活を始めていまして…(笑)。サイトを見て企業研究する姿を目の当たりにしたので、立川から「SDGsサイト」を立ち上げると聞いた時にはそんな話もしました。絶対に必要ですよね、と。
河野 純子
人事部人事制度課
マネジャー
比本
-
広報担当としても、「SDGsサイト」の開設をうれしく思っています。これまでは活動の一つひとつを断片的に紹介していたので、企業としての姿勢を社内外にトータルに発信できる場ができる! と期待しているところです。
数ある産業の中でも、アパレルは環境負荷の高い産業だと言われています。そのような課題に向け、今後「SDGsサイト」で訴求していくのは具体的にどんなことでしょうか。
小出
-
アパレル業界として分かりやすいところでは、各社が環境配慮素材を使った商品開発に取り組んでいて、我々も環境配慮型の「エコフレンドリー商品」を着実に増やしています。その他で独自性の高い取り組みとしては、“OKAERI(おかえり)エコ プロジェクト”ですね。全国に約600店あるAOKI、ORIHICAの店舗において、ご家庭で不要となった衣類を回収しています。我々の店舗は郊外のロードサイドに多いため、お客様が車で衣類を運びやすいという利便性もあります。回収した衣類は再資源化し、さまざまな製品に生まれ変わります。アパレル業界でもっとも大きな課題だと言われている、衣類の大量廃棄問題の解消を目指した活動です。
でも、これは今に始まったことではなく、(株)AOKIは1996年からウール製品の回収を行ってきました。ちょっと誇れる早さだと思うんですね。私自身、このことを知った時には驚きました。そんな歴史も、「SDGsサイト」ではきちんと訴求していきたいです。比本 佳奈
広報室・マネジャー
SDGsでは、「ジェンダー平等」や「働きやすさの実現」も目標に挙がっています。これに関して、AOKIの現状や今後の展望はいかがでしょうか。
比本
-
2022年に、D&I(ダイバーシティ = 多様性&インクルージョン = 受容性)の一環として「女性活躍推進プロジェクト」がスタートしました。2023年は現状把握と課題抽出を行い、2024年から実際に活動していく予定です。
河野
-
女性管理職の比率で言うと、2022年までは恥ずかしながらゼロだったんです…。2023年度に比本ともう1名が社内ライセンスを受験しマネジャー職に上がり、最近になって私もライセンスにチャレンジしてマネジャーに昇格しました。
これまでは、女性がみずから手を挙げてキャリアを積んでいく、そういう考えが社内に根づいていなかったと思います。そこを本気で意識改革しようと、2023年度に外部から講師を招き、男性管理職の方々を対象に、女性管理職を登用する必要性を説く研修を実施してもらいました。
今後はこの研修を継続しつつ、各店舗の女性ストアマネジャー約50名の中から「女性活躍推進プロジェクト」への参加希望者を募り、リーダー研修も実施する予定です。自分がこれからどのように働いていきたいか、将来のキャリアをじっくり考える機会になります。
どのようにキャリアを積んでいける環境なのかは新卒者も気になるところだと思いますが、社内の人事的な方針というのは。
森
-
年に一度、将来やりたいことや、部署の異動希望などをヒアリングシートに書いてもらう機会を設けています。もちろん、それが全てではなく、基本的にはジョブローテーションでさまざまな職種の経験を積んでもらいます。若手でも重要なポジションに登用していくという考え方ですね。
河野
-
ヒアリングシートを読んでいると、「この部署に行ってこんなことがしたい」「今まで自分はこんなことを学んできた」などと、ぎっしり熱く書いてくれる人が多いんです。その思いは人事部としても尊重していきたいと考えています。
「スポーツなどによる人々の健康づくり」や、「地域の活性化」もSDGsの課題となっています。ORIHICAが、オフィシャルスーツの提供などを通じてJリーグ・川崎フロンターレと深い関係を築いているのは、まさにそこに当てはまると思うのですが。お付き合いのきっかけや、これまでの取り組みについて教えてください。
小林
-
ではORIHICAの私から。そもそもORIHICAは、2003年に“Key to the new lifestyle”というブランドコンセプトを掲げ、次世代のライフスタイルの“鍵(カギ)”となるウェアを提供しようとスタートしました。
そんな中、川崎フロンターレ様と出会ったのは2006年です。当時、チームはまだJ1に昇格したばかりで、親会社である富士通様のサポートを受けながら、スポーツでの地域振興を目指して川崎市内で地道に活動しておられました。
ORIHICAも同じ神奈川で地域貢献を目指していたので、考え方が共鳴して、一緒に何かやりませんかとお声がけをいただいて。小林 千陽
ORIHICA商品構成部
ゼネラルマネジャーその頃からすでに、プロ野球チームではキャンプインや移動の際にスーツを着用する文化があったのですが、サッカーにはなかったんです。そこに着目して、スーツを着てみませんか、と。「フィールド内では戦士でも、フィールド外では紳士たれ」。きちんとした立ち居振る舞いができるように、オフィシャルスーツをご提案させていただきました。早いもので、そこからもう18年お付き合いが続いています。
選手の皆さんも、スーツ姿でマスコミ対応するご自分の姿をメディアでご覧になって「印象がいい」と感じられたんでしょうね。毎年、違うモデルをご提案するのですが、次第に生地やボタン選びにも興味を持ってくださって「今年は自分が選ぶ!」と(笑)。チームと同じデザインのスーツを一般販売もしていて大人気です。今後も、息の長い地域貢献ができればと考えています。
良いお話をありがとうございます。最後にあらためて森社長から、SDGsの実現に向けたメッセージをお願いします。
森
-
(株)AOKIのこれまでの歩みの中では困難なこともありました。お客様に支えられ、従業員一丸となって乗り越えたことで今があります。お客様に恩返しするためにも、AOKI・ORIHICAは「なくてはならない企業」であり続けたい。企業としての存続をかけ、SDGsにも従業員一丸で取り組んでまいります。