
スーツのボタンは留める?開ける?正しいボタンマナーについて解説
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スーツのボタンは留めたほうがよいのか、開けたほうがよいのか迷うことがありませんか? ボタンの数の違いや、ビジネスシーンやフォーマルシーンなどにおけるボタンのマナーを理解しておくと、周囲の人に好印象を与えるとともに、スーツをよいコンディションに保つことができます。そこで、本記事では正しいボタンマナーの基本について詳しく解説します。
目次
スーツのボタンマナーはなぜ重要か?
ボタンマナーは、相手に対して不快な印象を与えない配慮や心遣いという点で重要です。同時に、スーツは一定のルールでボタンを留めることを前提に設計されているため、ボタンマナーを知ることはスーツを上手に着こなす上で大切なポイントでもあります。
相手に対する礼儀
ボタンマナーを知らない方もいると思いますが、このマナーを重視する方にとってはボタンマナーに反した着こなしを心地よく感じられない可能性があります。特に、ビジネスシーンやフォーマルシーンでは、多くの方がマナーを守り相手に不快な思いを与えないよう努めているので、ボタンマナーに反した着こなしはできるだけ避けなければなりません。
スーツのシルエットがきれいに見える
スーツを着たときの全体のシルエットは、他人からは見えても自分では確認できません。しかし、ボタンマナーに従ってボタンを留めることで、そのスーツが持つもっとも美しいシルエットを作り出すことができます。スーツのボタンの数は1つから、多いもので6つもあるので、それぞれのボタンマナーを知ることはスーツを上手に着こなす上で非常に大切です。
スーツの生地が傷まない
ボタンマナーはスーツのシルエットを美しく見せるだけでなく、生地に無理なストレスをかけずシワ防止にもなるので、スーツを長く愛用するための知恵とも言えるでしょう。
<スーツのアンボタンマナーとは
アンボタンマナーとは、スーツのジャケットやベストのボタンの留め方について広く知られている基本ルールで、相手に不快な思いを与えないための礼儀や作法の一つです。19世紀のイギリス国王ジョージ4世や20世紀初頭の国王エドワード7世が、肉付きのよさからベストやジャケットの一番下のボタンを開けていたのを見た周囲の人達が、国王に倣ってボタンを開けたのことがルーツといわれています。
アンボタンマナーは、ボタンの数のほかシングルスーツやダブルスーツの違いによっても異なりますが、ここではシングルスーツの基本ルールを紹介します。
スーツの一番下のボタンは留めない
アンボタンマナーの由来にあるように、基本ルールはスーツのジャケットやベストの「一番下のボタンは留めない」というものです。その理由として、現在のスーツは一番下のボタンを留めない前提で仕立てられているスーツが大半なので、フロントの一番下のボタンを留めるとシルエットが崩れ、不要なシワができて着心地も悪くなるからです。
スーツを着て座るときはボタンを外す
この基本ルールは、「マナー」というよりも、スーツを長くよいコンディションに保つための合理的な「知恵」といったほうがよいかもしれません。スーツを着てボタンを留めたままで座ると裾が広がるので、ボタンのところから不自然な斜めジワができたり、背中の裾も左右に引っ張られ横ジワができたりするので、型崩れや生地にダメージを与える可能性があります。
ビジネスシーンなどで、相手がボタンを外して座っているときに、自分だけボタンを留めたままでいると、失礼になる場合があるので注意しましょう
スリーピーススーツの場合はボタンを留めなくてもOK
スリーピーススーツを着ているときには、ベストの上に着ているジャケットのボタンをすべて外すのが基本ルールです。ベストの上にジャケットを着てボタンを留めると、ウエスト部分が窮屈になりシワの原因になったり、シルエットがモタついたりする可能性があります。スリーピースーツの特性上、ファッションとして意図的に留めたり、会議など堅いシーンで周囲の雰囲気に合わせて留めたりしても失礼になりません。そのため、スリーピースーツ着用時はマナーの観点からもボタンを留めなくてもマナー違反にあたりません。
スーツのボタン数によるボタンマナー

シングルスーツのボタンマナー
シングルスーツは、2つボタンが一般的ですが、デザインやシーンによっては1つボタンや4つボタンのスーツなどもあります。
1つボタンスーツの場合
1つボタンのシングルスーツはビジネスシーンには向いていませんが、フォーマルシーンで着用するモーニングやタキシードなどは通常1つボタンとなっています。ボタンマナーは、ボタンが1つしかないので留めるのが基本ルールです。
2つボタンスーツの場合
2つボタンのシングルスーツはビジネスシーンだけでなくフォーマルやカジュアルなどのシーンでも非常に多く見られますが、ボタンマナーは一番下のボタンは留めないのが基本ルールです。
3つボタンスーツの場合
今では着られることが少なくなっている3つボタンのシングルスーツですが、2つボタンよりも体のラインにフィットするスタイルなので、ボタンマナーはより重要になります。 3つボタンのシングルスーツは、1番目と2番目のボタンは留めて、3番目(一番下)のボタンだけは留めないのが基本ルールです。
段返り3つボタンスーツの場合
段返り3つボタンのシングルスーツは、1番目のボタンがラペル裏に配置されています。そのため、1番目のボタンを留めるとラペルの折り返しが不自然になるので、通常は1番目と3番目のボタンは留めず、2番目のボタンのみ留めるのが基本ルールです。
4つボタンスーツの場合
縦に4つのボタンが並ぶシングルスーツは一般的ではありませんが、独自のファッションセンスを持つ人が選ぶ個性的なスタイルで、一番下のボタンは留めない状態が洗練されたシルエットを生み出します。
シングルスーツで座る場合
シングルのスーツで座る場合には、アンボタンマナーに従ってすべてのボタンを外すのが基本ルールです。
シングルスーツでベストを着用する場合
シングルスーツにベストを着用する場合には、ベストの上に着ているジャケットのボタンをすべて外すのが基本ルールです。
ダブルスーツのボタンマナー
ダブルスーツはジャケットのフロントボタンが縦2列に配置されているスーツで、2列のボタンの間隔は上が広く下が狭い「スプレッドアウト」と、2列のボタンが上から下まで等間隔に配置されている「オールインライン」の2タイプがあり、いずれも正面から見て右側のボタンは飾りで使用しません。また、ダブルスーツのボタンマナーはシングルスーツとは異なるので注意しましょう。
4つボタンスーツの場合
4つボタンのダブルスーツは「1つ掛け」と「2つ掛け」の2種類の着方があります。
1つ掛けは、下のボタンだけ留める着方でVゾーンがより広くなるので動きやすく、重厚なダブルスーツの中では軽快な印象が強まるので、初めてダブルスーツを着る方におすすめの着方です。オールインラインタイプで1つ掛けをすると、ラペルの折り返しが不自然な印象になりますが、スプレッドアウトタイプのスーツの1つ掛けは個性を演出することも可能。
2つ掛けは、オールインラインタイプのダブルスーツで上下のボタンをすべて留める着方です。この着こなしはVゾーンが狭くなるため、より重厚でフォーマルな印象を与えます。 また、フォーマルな場以外であれば、シングルスーツのように一番下のボタンを留めない着方も選べます。
6つボタンスーツの場合
6つボタンのダブルスーツには「1つ掛け」「2つ掛け」「3つ掛け」の3種類の着方があります。
1つ掛けは一番下のボタンだけを留める着方で、スプレッドアウトタイプに多く見られます。このスタイルは、1920~1930年のアメリカで流行ったボールド(大胆な)ルックと呼ばれ、男性的なイメージが強調されますが、Vゾーンが広くややルーズな印象になるのでフォーマルシーンでは避けたほうがよいでしょう。
2つ掛けは真ん中と一番下のボタンを留める着方で、Vゾーンが狭くなり重厚でフォーマルな印象が強まります。このスタイルは、6つボタンのダブルスーツではもっともスタンダードな着方で、さまざまなシーンに対応できます。2つ掛けはスプレッドアウトタイプに多く見られ、フォーマルシーンでなければシングルスーツのように下のボタンを留めない着方も可能です。
3つ掛けはすべてのボタンを留める着方で、オールインラインタイプでのみ可能なスタイルです。1960年代のロンドンから世界の若者たちに広がったモッズルックの代表的アイテムが6つボタン3つ掛けのダブルジャケットだったことから、ファッション的なイメージが強くなります。すべてのボタンを留めるためVゾーンが狭く、堅い印象が強くなりますが、色や柄がシックであればビジネスやフォーマルにも対応可能です。
ダブルスーツで座る場合
ダブルのスーツは前合わせが深いため、ボタンを外すと前身頃がだらしなく垂れるので、立っているときも座っているときも基本的にボタンは留めたままです。
ダブルスーツでベストを着用する場合
シングルスーツにベストを着用するときはジャケットのボタンは外しますが、ダブルスーツにベストを着用する場合にはボタンは留めたままが原則です。
スーツのシーン別ボタンマナー

スーツのボタンマナーは、シングルスーツ・ダブルスーツの違いやボタン数以外にもシーンによって変わる場合があります。そこで、ビジネスシーン、フォーマルシーン、リクルートシーンにおけるボタンマナーの注意点を解説します。
ビジネスシーンのボタンマナー
ビジネスシーンのボタンマナーは、相手に対する敬意や礼儀の視点で考える必要があります。基本的には前項で解説したボタンマナーで問題ありませんが、注意しなければならないのは着席するときです。大切な顧客や自分よりも上位の人と面談するときに、相手が着席してもボタンを留めたままだった場合、シングルスーツであっても相手に合わせてボタンは留めたままがよいでしょう。
ビジネスシーンではできるだけ相手に好印象を与えることが大切ですが、ボタンマナーに従って自分だけボタンを外して対応していると、生意気な印象を相手に与えるリスクがあります。
フォーマルシーンのボタンマナー
シングルスーツの場合にはアンボタンマナーに従い、立っているときは一番下のボタンを外し、座るときやベスト着用時にはすべてのボタンを外しても問題ありません。ただし、ダブルスーツやタキシードの場合には、常にすべてのボタンを留めたままとするのが原則です。
1つボタンのフォーマルスーツの場合には特別のルールがあります。慶事に出席するときは表ボタンの裏側に付けられている内ボタンで「拝み合わせ」にして留めますが、弔辞に出席するときは表ボタンで通常どおりに留めます。
リクルートシーンのボタンマナー
リクルートシーンにおけるスーツの着こなしでは、面接官に対し悪い印象を与えないことはもちろんですが、できれば好印象を残したいところ。考え方は、ビジネスシーンにおいて大切な顧客や自分よりも上位の人と面談するときよりも、さらに礼儀正しく心がけることです。
そのためには、立っているときも、座っているときもすべてのボタンを留めたままにすることをおすすめします。また、ダブルスーツやスリーピーススーツはフレッシュな印象を妨げるので、着用するのは避けましょう。
レディススーツのボタンマナー
レディススーツはメンズスーツとは違い、すべてのボタンを留める前提で仕立てられています。かつては、シングルスーツでもダブルスーツでもボタンはすべて留めるのがマナーとされていました。
しかし、昨今ではオフィスカジュアルが浸透しボタンを留めないことが増えたため、以前のようにボタンを留めることが珍しくなっています。そのため、レディーススーツ着用時はボタンを留めないことが主流となっていると認識しておくとよいです。
スーツに袖ボタンが付いている理由
スーツのフロントに付いているボタンについては知識があるものの、袖口のボタンについてはあまり意識していないのでよく分からない、という方も多いのではないでしょうか。 袖ボタンの由来は諸説ありますが、18世紀ごろに軍服の袖口を開閉できるようにするために設けられたといわれています。ですから、本来は機能性を向上するためのディテールの一つでしたが、現在は装飾として考えられています。
スーツの袖ボタンの数
かつては、袖ボタンの数で軍隊での階級や出身地を表していた時代もあるようですが、現在では袖口の個性を演出するアイテムであり、ボタンの数は袖口をどのような印象にするかというデザイン面から判断されています。ボタン数のルールはありませんが、3個または4個が一般的で、数が多くなるとオーダー感や主張が強くなり、少なくするとカジュアル感が強くなります。
スーツの袖口の仕様
袖口の仕様は大きく分けると「本切羽(ほんせっぱ)」と「開き見せ(あきみせ)」、「筒袖(つつそで)」の3種類があります。「本切羽」は実際にボタンホールを使用して、袖口を開閉できるようにした仕様。「開き見せ」はボタンホールが飾りで袖口は開閉できないものの、本切羽のように見える仕様。「筒袖」は袖ボタンがないものや、袖口の端が単に筒状に縫われている仕様のことです。一般的には本切羽のように手間が多くかかる仕様ほど高級と感じられる傾向です。つまり、ボタンホールはミシン縫いの場合よりも手縫いの方が、グレードが高いという印象を与えられます。
スーツのおしゃれな袖ボタン
スーツへのこだわりをさりげなく主張するには、袖ボタンはとても効果的なアイテムです。オーダースーツであれば選択可能なボタンの種類や素材が多数あるので、水牛ボタンやナットボタンなどの高級素材で差別化を図るのもよいでしょう。また、ボタンの付け方もイタリアのサルトリアに代表されるキスボタン(重ねボタン)仕様にすると立体感がプラスされます。 ただ、あまり凝りすぎるとビジネスシーンでは浮いてしまうので注意が必要です。
まとめ
シングルスーツとダブルスーツではボタンマナーが異なりますが、それぞれのボタンマナーに従えばどんなシーンでもシルエットをきれいに見せるとともに、周囲の人によい印象を与えられるでしょう。また、大切なスーツをよいコンディションで長く愛用するためにも、本記事を参考にして正しいボタンマナーを身に付けてください。
ただし、ビジネスシーンやリクルートシーンなどでは、ボタンマナーに従うかどうかは相手や状況に応じて判断することも大切です。