
礼服と黒いビジネススーツは何が違うの?
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若い世代の方の中には、冠婚葬祭に参列する機会がそれほど多くないことから、礼服を持たず黒いビジネススーツで代用するケースもあるでしょう。しかし、礼服のブラックスーツと黒いビジネススーツは同じではありません。そこで本記事では、改まった席やフォーマルなシーンで場違いな服装をしないよう、礼服の種類をはじめ、礼服とビジネススーツとの違い、礼服を購入する際の5つのポイント、礼服のシーン別マナーなど、詳しく解説します。ぜひ、最後までご覧ください。
礼服とは
礼服とは、結婚式・お葬式など、慶事や弔事に関する行事(冠婚葬祭)で着用する正装を指し「フォーマルウェア」と呼ぶこともあります。ただし、お祝いごとの「慶事」と、お悔やみごとの「弔事」では、まったく異なる行事であるため、それぞれに相応しい礼服を着用するのがマナーです。
礼服と喪服の違い
「礼服」=「喪服」と考えている方もいますが、「礼服」が冠婚葬祭全般で着用する正装全般を指すのに対し、「喪服」は弔事のみで着用する正装のことです。なお、喪服は弔事の種類や立場によって「正喪服」「準喪服」「略喪服」の3種類に分かれます。
正喪服は、葬儀や告別式で喪主及び親族が着用する礼服です。洋装のモーニングや、和装の紋付羽織袴が該当しますが、近年では正喪服を着用する方は減っています。準喪服は、正喪服よりもシンプルなブラックで、喪主及び親族のほかに、参列者の着用も多く見られます。略喪服は、礼服の代用として色調を抑えたダークスーツなどを指し、喪主や親族以外の参列者が仕事などの都合により着替える時間がない場合には、ダークスーツといった略喪服でも失礼に当たりません。
礼服の種類
礼服には、喪服と同様に「正礼装」「準礼装」「略礼装」の3種類があり、着用する時間帯や場面、立場に相応しい礼服を着用するのがマナーです。
正礼装(モーニングコート・燕尾服)
主に、18時までの日中行事に着用するに当たり、もっとも格式の高い礼服は黒のモーニングコートです。ジャケットの前裾が緩やかな曲線で斜めにカットされており、背中側の長い裾に続いているデザインが特徴です。黒またはグレーのベストに、黒とグレーの縦縞のコールパンツと呼ばれるスラックスが組み合わされます。格式の高い式典の主催者や参加者、結婚式の新郎や新郎新婦の父親などの立場でモーニングコートを着用し、モノトーンのレジメンタル柄のネクタイが組み合わされます。
一方、18時以降の夜間行事に着用する際、もっとも格式の高い礼服は黒の燕尾服です。ジャケットの前裾が短く直線的にカットされており、背中側の燕の尾のように長い裾に続いているデザインが特徴です。ジャケットと同じ生地で、側章(飾りのテープ)が付いたスラックスが組み合わされます。ノーベル賞の授賞式のように、極めて格式の高い夜間の式典などのシーンで着用され、白の蝶ネクタイを組み合わせることが一般的です。
準礼装(ディレクターズスーツ・タキシード)
準礼装は最上級の正礼装よりもモダンかつ、ややカジュアルな礼服で、正礼装と同様に日中行事と夜間行事では、着用する礼服が異なります。
日中行事に着用する礼服のうち、モーニングコートに次いで格式が高いのは「ディレクターズスーツ」です。上着は1つボタンのテーラードジャケットで、ベントの無いデザインが特徴です。白いシャツにグレーのベスト、白やシルバーのレジメンタル柄のネクタイを着用するのが一般的です。また、ディレクターズスーツには、モーニングコートと同じく、コールパンツと呼ばれるスラックスが組み合わされます。
夜間行事に着用する礼服において、燕尾服に次いで格式が高いものは「タキシード」です。色は黒または黒に近いミッドナイトブルー、ジャケットは1つボタンにベントが無いスタイルで、白のウィングカラーシャツと黒い蝶ネクタイを着用するのが一般的です。通常、ジャケットの下にベストまたはカマーバンドを着用しますが、省略することもできます。なお、燕尾服と同様に、ジャケットと同じ生地で側章(飾りのテープ)が付いたスラックスが組み合わされます。
略礼装(ブラックスーツ・ダークスーツ)
濃いグレーや濃紺など、ダークカラーを使用した無地に近いスーツは、略礼装として着用することができます。礼服の中ではもっとも格式が低くなりますが、日中・夜間を問わず着用でき、シャツやネクタイの組み合わせを変えることで、弔事や慶事にも参列できます。また、ブラックスーツは略礼装に分類されていますが、現在では準礼装としてさまざまな冠婚葬祭のシーンで着用されています。
礼服と黒のビジネススーツの違い

従来、黒のスーツは「フォーマルウェア」という認識が強かったため、ビジネスシーンで黒のスーツを着用していると「何かあったのでは?」と勘違いされる可能性がありました。しかし、近年ではリクルートスーツは黒のスーツが定番となりつつあるため、ビジネスシーンでも黒のスーツを見かけるようになりました。黒のビジネススーツを礼服として利用できれば、着用頻度の少ない礼服を買わずに済むため経済的ですが、実際にはいくつかの点で異なります。
礼服はスーツの1つ
スーツはジャケットとスラックスが同じ生地で仕立てられた衣服のことで、一方、礼服は冠婚葬祭で着用する正装のことです。男性の礼服は、フォーマルスーツとなるため「スーツ」というカテゴリーに含まれています。また、ブラックスーツは単なる黒いスーツではなく、フォーマルスーツを指すのが一般的です。
礼服とビジネススーツとの違い
礼服の1つであるブラックスーツは、黒のビジネススーツと似た形をしていますが、深みのある色・重厚感のある素材・フォーマル度を重視したデザインなどの点において、明確な違いがあります。
色の違い
礼服に使用される生地は、特殊な染め方と織り方によって漆黒に仕上げられているため、屋外でも色が薄く見えることはありません。しかし、黒のビジネススーツの場合には、光の反射によってグレーがかった薄い黒に見えることがあることから、漆黒の礼服を着用している人の中に混じると目立ちます。
生地の違い
礼服に使用される生地には、光沢の少ない重厚感のある上質なウールが用いられるのが一般的です。ビジネススーツの場合は、高級ウールやカシミアなどの素材も使用されますが、上質な素材を使用したスーツの中には光沢感のある生地を使用したものもあります。
デザインの違い
冠婚葬祭といった着用シーンが限られている礼服は、動きやすさよりもフォーマル度を重視したデザインです。一方、ビジネスシーンで着用するビジネススーツは、耐久性や機能性を重視したデザインとなっています。もっとも分かりやすい違いは、ブラックスーツはフロントボタンが1つでベントはありませんが、ビジネススーツのフロントボタンは2つまたは3つで、センターベントまたはサイドベンツのスタイルが一般的です。
また、モーニングコートやディレクターズスーツは1つボタンですが、ブラックスーツは2つボタンが主流で、ベントがあるものが多いという特徴があります。ビジネススーツの3つボタンのものはほぼ流通していません。
礼服とビジネススーツは色や生地以外は大きな違いは見られません。
礼服とビジネススーツは兼用しないのが原則
色・生地・デザインの違いが明確のため、礼服を着ている人の中へ黒のビジネススーツで加わると、違いが目立ってしまいます。着替える時間がないような突発的な行事へ参加する場合には、黒のビジネススーツでも良いのですが、予定が分かっている葬儀や告別式などの弔事に参加する場合には、黒のビジネススーツは不適切とされています。当然、喪主や故人の近親者の場合は、礼服が原則となります。
礼服を購入する際の5つのポイント
礼服を購入する際、もっとも重要な点は長い期間着用できることです。そのためには、以下の5つのポイントを購入前にチェックしてください。
- 1 オールシーズン着用できる
- 2 流行に左右されないデザイン
- 3 体型の変化にも対応できる
- 4 高価すぎない
- 5 慶事・弔事どちらでも着られる
何かあってから慌てて購入すると、後で後悔する事態となりかねません。
それでは、一つずつ詳しく見ていきましょう。
オールシーズン着用できる礼服を選ぶ
ビジネススーツなどと同様、礼服にも季節に合わせて春夏物や秋冬物がありますが、着用頻度が少ないことから、季節ごと礼服をそろえるのは経済的ではありません。そのため、初めて礼服を購入する場合は、一年を通して着用できるオールシーズンタイプの礼服をおすすめします。
しかし、昨今は酷暑といわれるほどの暑さが特徴的です。炎天下のなかでの業務は室内でも室外でも汗をかくことも珍しくありません。そんな方におすすめしたいのはサマーフォーマルです。
AOKIでは数多くのスーツを取り揃えていますが、そのなかでも夏の主力商品のひとつとなっているサマーフォーマルは通気性も抜群です。夏を快適に過ごしたい方は、オールシーズン用のほかにサマーフォーマルも揃えると夏の時期もより快適に過ごせます。
流行に左右されないデザインの礼服を選ぶ
礼服は、毎年買い替えるような衣服ではないため、ある程度の期間着用することを前提に考える必要があります。しかし、礼服を購入する際、ほかの洋服のように流行のデザインを選んでしまうと、数年後には流行が変わってしまい、野暮ったく感じてしまうかもしれません。すると、結局着なくなる可能性があるため、流行に左右されないデザインを選びましょう。
体型の変化にも対応できる礼服を選ぶ
流行の変化のみならず、年齢や出産などによって体型も変化します。購入時の体型に合わせてサイズを選ぶと、数年後には体型が変化して着られなくなる可能性があります。そのため、礼服を購入する際は、体型の変化も想定して、ゆったりとしたデザインや、ウエストなどのサイズ調整ができる仕様のものを選ぶとよいでしょう。
高価すぎない礼服を選ぶ
礼服は、素材や仕立てなどの要素により、さまざまな価格で販売されていますが、1着目から高価な礼服を購入するのはおすすめできません。特に、若いうちは礼服に対する知識が少なく、購入後の流行や体型の変化も考えられます。反対に、あまりにも安価な礼服を選ぶと、上質感が低下してしまうため、自分の年齢や収入などに見合った価格の礼服をおすすめします。
一着目は慶事・弔事どちらでも着られる礼服がおすすめ
冠婚葬祭には慶事と弔事があり、それぞれでまったく意味合いが異なるので、黒だからと弔事用の喪服を着用して結婚式などの慶事に出席することはできません。そのため、1着目の礼服は、入学式・結婚式・葬儀・告別式など、さまざまな冠婚葬祭で着用できるブラックスーツがおすすめです。
礼服はシーンによって使い分ける

冠婚葬祭において、主催者に失礼にならないようにするためには、礼服はシーンや立場によって使い分けることが大切です。ここからは、礼服を着用する機会としてもっとも多い結婚式・葬儀・告別式における礼服のルールについて解説していきます。
結婚式の礼服
結婚式の参列者が一番気をつけなければならないのは、主役の新郎新婦よりも目立たない服装を心掛けることです。極端な例ですが、新郎が準礼装のタキシードを着用している際、友人が目立つ正礼装のモーニングコートで参列することはNGです。
男性が結婚式に出席する場合、格式の高い結婚式には、モーニングコートやタキシードを着用することもあります。しかし、一般的にはブラックスーツやダークスーツを着用し、白のシャツにネクタイはモノトーンのレジメンタル柄・明るいグレー・シルバーの無地が基本です。招待状に「ブラックタイでお越しください」と書かれている場合は「タキシードでお越しください」という意味で、タキシードに黒い蝶ネクタイを着用します。日本では、お祝いの席で黒のネクタイはタブーとされていますが、蝶ネクタイは黒でも問題ありません。参考までに「ホワイトタイでお越しください」と書かれている場合は「燕尾服でお越しください」という意味になります。
また、結婚式の招待状に「平服でお越しください」と書かれている場合もありますが「平服」の意味は、ジーンズなどのカジュアルウェアではなく、略礼装を指すので注意しましょう。
葬儀・告別式の礼服
喪主や親族の場合は、正喪服または準喪服としてのブラックスーツなどを着用します。しかし、故人の友人や知人、あるいは仕事上の関係者として、葬儀や告別式などの弔事に参列する場合には、ブラックスーツのほかにビジネススーツで代用することも可能です。
ブラックスーツの場合には、白いシャツと黒のネクタイが基本で、腕時計・アクセサリー・エナメルの靴など、光沢感のあるものは身につけません。ビジネススーツで代用する場合には、できるだけダークで無地に近いものを選び、白いシャツと黒のネクタイを組合せます。この際、身につけるものはブラックスーツに準じ、光沢感のあるものはNGです。
まとめ
礼服のブラックスーツと黒のビジネススーツは、一見すると同じように見えますが、深みのある色、重厚感のある素材、フォーマル度を重視したデザインなどの点で明確な違いがあり、周囲から見てもはっきりと分かります。そこで、黒のビジネススーツやダークスーツを礼服の代用とする場合には、慶事・弔事のルールに従い、シャツやネクタイなどを組み合わせて、それぞれのシーンに相応しい着こなしを心掛けてください。
また、礼服を選ぶ際には「正礼装」「準礼装」「略礼装」の区別を理解することが大切です。
- 1 オールシーズン着用できる
- 2 流行に左右されないデザイン
- 3 体型の変化にも対応できる
- 4 高価すぎない
- 5 慶事・弔事どちらでも着られる
以上の5つのポイントをチェックし、長く着られる礼服を選びましょう。