1958年に創業し、
日本のビジネススーツを牽引してきたAOKIが、
イタリアの名門生地メーカー、REDA社と
大規模なコラボレーションを開始した。
AOKI×REDAの生地コレクションの名は、
『MOVIMENTO(ムービメント)』。
そこには、上質な風合いや豊かな表情を
備えながら動きやすい、
"現代のスーツ"に求められる生地が揃う。
なぜ、REDAに白羽の矢を立てたのか。
企画を担当したAOKI取締役 副社長の
小出大二朗氏と、
MEN'S EX編集長の大野 陽氏の
対談を通じてその理由を解き明かすとともに、
MOVIMENTOを用いた
"美しくしなやかなスーツ"の魅力に迫る。
1865年、イタリア生地の聖地であるビエラにて創業。
ニュージーランドに自社経営の羊牧場を所有し、原毛の仕入れから仕上げまでを自社で行える「一貫紡」の体制をもつ名門ミルである。
イタリアらしい美意識に基づく色柄提案や、生産のオートメーション化によるハイクオリティな生地づくりに定評があり、近年ではウールを用いた機能性生地の分野でも、先駆として業界をリードしている。
『MOVIMENTO(ムービメント)』は、AOKIとのエクスクルーシブコレクションである。
AOKI企画担当 小出氏と
MEN'S EX大野編集長が語る
イタリアの名門生地〈REDA〉の魅力とは?
大野 陽
2013年から2017年までMEN'S EXの編集長を務め、時計Begin編集長などを経て、2025年に再び現職へ。過去にREDA本社にも取材経験あり。
小出 大二朗さん
三陽商会でポール・スチュアート事業責任者などを担い、2017年に豊島へ。2022年、AOKIへ入社し、REDAとの共同生地開発も主導する。
- 大野
- 早速ですが、世界中にさまざまな生地メーカーがあるなかで、なぜREDAと生地を共同開発しようと思われたのですか?
- 小出
- まずAOKIの『JUNKO SHIMADA JS homme』や『LES MUES』のスーツにマッチする生地を作りたいというのが発端で、ならばエレガントなイタリアの生地メーカーと作るのがいいだろうという思いがありました。そして数あるイタリアの生地メーカーの中でも、REDAは1865年創業と非常に歴史が深い。歴史の裏づけはお金では買えない価値があるというのが、1つ目の理由です。
- 2つ目は、REDAの生地にはクラシックな柄もあるんですけど、ファンシー系の色柄も得意としていて、艶があって──と、キレイめなテイストがある。そこが我々のスーツと合うのではないかという理由ですね。
- 3つ目は、REDAは環境への取り組みが凄いんです。今でこそサステナビリティですとか、トレーサビリティっていう言葉が出ていますけど、REDAはイタリアの繊維企業で初めてBコーポレーション認証(※)を取得した企業であると。実際にREDA本社に伺ってその辺の話をうかがったりですとか、先端の研究をしている部屋も拝見したことが決定打になりました。本社には大野さんも行かれたんですよね?
- 大野
- ええ、だいぶ前で2011年に。社長もエルコレさんで変わってないですよね?
- 小出
- ええ、変わってないですね。
- 大野
- 2011年当時、私もやはりサステナビリティへの意識の高さに驚きましたし、生産のオートメーション化にも感銘を受けました。
- 小出
- 全部オートメーションで、もう全然人がいない部屋がありますものね。
- 大野
- 人がいないから埃が舞わないとか、オートメーションの良さがあるんですよね。
- 小出
- 一方で最終検反も人の目でしているし、生地のクリエーションも当然、人がやっている。アナログとデジタルの融合の妙というものを感じました。
- 大野
- おっしゃる通りですね。
米国のNPO団体「B Lab」が運営する、企業が社会・環境に与えるポジティブな影響やパフォーマンスを評価・認証する国際制度
ウールに機能性を加味した先駆者
- 大野
- 今お召しになっているスーツもREDAの生地を用いたものですか?
- 小出
- はい。AOKI×REDAの『MOVIMENTO』というネームの生地で、私が着てるのは『JUNKO SHIMADA JS homme』の『金のスーツ』ですね。金のスーツに用いる生地は、REDAの最高峰であるスーパー150'S原毛の『マイヨール』コレクションをベースに、ストレッチなどのオリジナル性を加味したものになります。
- 大野
- なるほど。
すごく上品な光沢感があって、とてもポリウレタンが入っているとは思えない風合いです。 - 小出
- ストレッチを入れて快適性を追求しながら、金のスーツでは、相手に対しての気遣いだとか、着ていて自信を持てるとか、スーツが本来備えているものを⼤切にしたいという思いがあって。
そこも上手く表現できたのではないかと。 - 大野
- ペーンの配色にもさりげない主張があって素敵ですね。もう1つの『LES MUES』のスーツのほうは、どんな方向性で生地を開発されたんですか?
- 小出
- 『着回しクロススーツ』という、上下で着回しの効くスーツ用にと開発した生地なのですが、こちらはREDAの『アティチュード』という生地コレクションにストレッチ性を加味してオリジナリティを出したものです。
上下着回しが自由にできて、ジャケット1つに対して、グレーのスラックスなり、よりカジュアルな綿のパンツなり別のパンツを合わせられる、汎用性の高いスーツを開発しようというところにREDAの生地がうまくハマったと思っています。 - 大野
- ビジネスマンに嬉しい価格も魅力です。
- 小出
- REDAの生地を用いてこの価格は他にないと思います。実現できたのはやはり、お互いの取り組みに対する想いが合致したからこそ。一般には10万円を超えるような価格になってしまうと思うので、そこは価値のあるものを作った自負があります。
時代に即した、美しくしなやかなスーツ
- 大野
- 今回、AOKIのスーツを拝見して、タイトルを『ビジネスマンのための美しくしなやかなスーツ』と付けたのですが、しなやかというのは軽やかに着回しするみたいなニュアンスも含んでいて。今の時代が求めるものだとも思うのですが、AOKIの考えるこれからのビジネススーツに必要な要素は?
- 小出
- 大きく2つあると思っています。1つはおっしゃる通り、より自由に着られること。スーツがカジュアル化している流れがある中で、私どもも『パジャマスーツ』を提案していますが、自由に着られる、できる限り軽く着やすい服の作りですとか、着回しやすい素材感や色柄の設定が重要になると思っています。
- ただ、やはりスーツには相手に対しての礼節を表現する部分がある。着ることによって背筋が伸びて、自信を持てるというのもスーツの持っている力かなと思ってまして、そこも変わらず求められると思うんです。自由とはちょっと相反するようなところかもしれないのですが、『JUNKO SHIMADA JS homme』や『LES MUES』ではこちらの側面も大切にしています。
- 大野
- 同感です。多様性の時代らしく自由な着こなしを楽しみながら、誕生から360年といわれるスーツの歴史の重みも大切にしていきたい。我々MEN'S EXも、"楽しくスーツを着よう"ということを、これからも伝えていきたいと思います。
厚い信頼関係で実現した
AOKI×REDAのスーツLIST
左/SHIMADA JS hommeのスーツ10万9890円、
同シャツ7689円、
LES MUESのタイ5489円。(コン)
左/LES MUESのスーツ7万290円、
JUNKO SHIMADA JS hommeのニット1万989円、(ワイン)
L&Wデザインのカットソー4389円。(シロ)
AOKI×REDAのエクスクルーシブ生地コレクション
である『MOVIMENTO』は、
2つのブランドのスーツに使用される。
1つは、最高峰ラインである
『JUNKO SHIMADA JS homme』の
『金のスーツ』。
そしてもう1つが中核ラインである
『LES MUES』の『着回しクロススーツ』だ。
前者には、スーパー150'Sの上質な原毛を用いながら
ストレッチ性を加味した艶に富む生地。
後者はよりストレッチ性が高く、
着回しやすい表情のある生地が用いられる。
以下、両者のスーツおよび使用する生地の特徴を
見ていこう。
デザイナー・島田順子さんが
手がけた優雅さと色気のある
シルエットライン
『JUNKO SHIMADA JS homme』は、フランス芸術文化勲章を受賞した経歴をもつ世界的デザイナー、島田順子さんがデザインを手がけるブランド。彼女ならではの美意識が息づくそのスーツは、ナチュラルな肩線とグラマラスな曲線を描くウエストラインが特徴的で、ボディラインを美しく浮かびあがらせる。優雅さと色気のあるシルエットが魅力である。
AOKI×REDAの生地を用いた『金のスーツ』はその最高峰シリーズであり、職人のアイロンワークや手作業によるいせ込みを駆使した、立体的な仕立てがなされる。シルキータッチのしなやかな生地と軽やかな仕立てが織りなすそのスーツは、着るというより羽織るという表現がぴったりくる。
コンパクトなシルエットで
トレンド感のある
若々しいデザイン
AOKIの中核をなす価格帯の『LES MUES』。「生まれ変わる」という意味をもち、"新しい自分"への変化を後押しするブランドで、コンパクトなシルエットを備えたスタイリッシュなスーツが揃う。今季は、ジャケットやパンツを単品使いしやすく、多様なシーンで着回せる『着回しクロススーツ』が新たにラインナップ。
このために開発されたAOKI×REDAの生地は、より強力なストレッチ性を備えつつ、ニットやコットンパンツなどのカジュアルなアイテムとの相性がいい豊かな織り感をもつ。混紡されるポリウレタンは有害物質が低減された環境配慮型のロイカ。特殊加工のUVフィニッシュにより、生地の艶を増しているのも特筆点だ。
大野編集長
コメント
快適に着られてカジュアルな着崩しにもしなやかに対応する、まさしく今の時代を捉えたスーツだと思います。ポリウレタンを4%混紡したストレッチ性に富む生地には、機能性ウールの先駆けであるREDAの真価を感じます。スマートなシルエットとの相性も、抜群ですね。
- 一部限定店舗のみ展開の商品もあります。
オンラインショップでも購入可能です。 - この特集で使用した商品の価格はすべて、税込価格です。
- 商品の発売時期や取扱いについては掲載時の情報となります。










大野編集長
コメント
選り抜きのスーパー150'S原毛を使用しているだけあって、一目で上質とわかる艶のあるスーツですね。とてもストレッチ素材には見えない。これだけハイクオリティな原毛を用いた機能性生地というのも、見たことがありません。クラシックでいて、色や柄にさりげない個性があるのも好印象です。