スーツと礼服の違いとは?
ブラックスーツの意味・礼服の選び方も解説
黒のリクルートスーツやビジネススーツを持っている方の中には「これを冠婚葬祭用に、礼服として着用してもいいのだろうか?」と疑問に思っている人もいるでしょう。実は一口に「黒のスーツ」といっても、さまざまな種類があるので注意が必要です。
そこで本記事では、黒のリクルートスーツやビジネススーツと、礼服の違いを解説します。礼服の種類や、購入する際のポイントなどもまとめました。
目次
スーツと礼服の違いとは
スーツとは、同一の布で作られた、2つ以上のものからなる上下一揃いの服のことを指します。スーツの起源は16世紀頃からイギリスで着用されていたフロックコートという上着だとされており、現代のスーツの形に近づいたのは、19世紀頃といわれています。
現在、スーツにはさまざまな種類があり、その中でも冠婚葬祭(結婚式・不祝儀)に着用するものを「フォーマルスーツ」と呼びます。
そして礼服は、冠婚葬祭に着用する衣服全般を指します。和服の場合は袴(はかま)などを指しますが、洋服であれば、前述したフォーマルスーツが該当するというわけです。
フォーマルスーツ、つまり礼服は、結婚式や公的なパーティーなど、格式の高い場面で着用されるものです。
リクルートスーツと黒のビジネススーツの違いとは
さて、黒のスーツといえば、リクルートスーツや、黒のビジネススーツを思い浮かべる方もいるでしょう。これらの違いは何なのでしょうか。
リクルートスーツとは、主に就職活動中に着用するスーツを指します。例えばインターンシップ・会社説明会・OBOG訪問・企業の面接など、さまざまなシーンで重宝します。
清潔感があり、派手ではなく落ち着いたデザインのものが主流で、色は黒をはじめとして、濃紺や濃いグレーなどダークな色み、かつ無地のものが多いです。
明確な定義があるわけではないので、リクルートスーツとして売られているものを、ビジネススーツとして社会人が着用することも可能です。リクルートスーツはしわになりにくい、ポリエステル混などの素材で作られたものが多いのも特徴といえるでしょう。
一方で黒のビジネススーツは、その名の通り、仕事で使う黒いスーツのことです。黒のビジネススーツとして売られているものを、リクルートスーツとして着用するのも可能です。
ただビジネススーツの場合、ストライプ柄などが入っているものもあるので、そういったデザインは就活の際には避けた方が無難といえるでしょう。
黒のビジネススーツと礼服の違い・見分け方とは

黒のビジネススーツと礼服には、着用シーンに違いがありそうということは分かりましたが、見分ける方法はあるのでしょうか。礼服には燕尾服(えんびふく)・タキシード・ブラックフォーマルスーツなどの種類がありますが、ここでは、共通してビジネススーツと違う点について詳しく解説します。
特に黒のビジネススーツとブラックフォーマルスーツは混同されがちなので、ぜひ参考にしてみてください。
【違い1】色の濃さ
同じ黒でも、黒のビジネススーツは、よく見るとグレーがかっていたり、紺っぽく見えたりする場合があります。それに比べて礼服は、より濃くて深みのある漆黒であるのが特徴です。何度も染めるなど、手間を掛けることで真っ黒にしているのです。
礼服は、一般的に黒色が濃いものほどフォーマル度が増すといわれています。冠婚葬祭の場では、より黒く、重厚感のある装いが望ましいでしょう。
【違い2】生地の質・光沢
ビジネススーツに使われる生地は、ストレッチ性や通気性が高い、軽量など、機能性・着心地に優れた素材の場合が多いです。
一方で礼服は上質さや高級感を重視しているため、厳選された素材を、時間を掛けて丁寧に織った生地を使用して作られています。多くの糸を編み込んだ、しっかりとして密な質感をしています。
また、礼服は光の反射が少ない生地が用いられており、質感はマットで控えめに見えるのが特徴です。
【違い3】ジャケットのラペルやベントなどのデザイン
ビジネススーツには、ラペル(襟)の縁に沿って、ステッチと呼ばれる縫い目がありますが、礼服にはそれがない場合が多いです。これは、製法の跡をできる限り見せないためだといわれています。ただし、礼服の中でもブラックフォーマルスーツには入っているケースもあります。
また礼服には、ピークドラペルが採用されるケースも少なくありません。ピークドラペルとは、下襟の先端が上を向いてとがっている形のことです。華やかさやドレッシーな印象を与えられます。
なお人によっては、ピークドラペルは華美な装いとなるので、弔事などでは着ない方がいいという意見を持つ人もいるようです。しきたり・マナーとして必ずしもNGと定められている訳ではありませんが、不祝儀の場では避けた方が無難ともいえるでしょう。
ベントと呼ばれる、裾の切れ込み部分にも違いが見られることがあります。ビジネススーツの場合、動きやすさを担保するために、センターベントや、左右のサイドベントが入っているケースが多いです。しかし礼服では、機能性よりも礼を重んじるため、ノーベントが一般的。ただし近年では、礼服でもベントを採用した実用的なデザインのものも増えてきています。
【違い4】着用時のシルエット
ビジネススーツのシルエットは、その時代のトレンドを反映したものも多いです。また、職場の雰囲気や仕事内容にもよりますが、多少遊び心のあるものを自身のラインナップに加えることもあるでしょう。
一方で礼服は、比較的着る機会も少ないので、数多く所有したり、頻繁に買い替えたりする方は少ないようです。5年、10年など長く着用するケースも一般的なので、トレンドに左右されない、ベーシックなシルエットが選ばれる傾向にあります。
礼服の種類
礼服には大きく分けて、正礼装・準礼装・略礼装があります。さらにその中に、タキシードやブラックフォーマルスーツなど、さまざまな種類があります。ここではそれぞれについて、具体的に紹介します。なお分け方には諸説あるため、今回は代表的なものをまとめました。
正礼装│モーニングコート・燕尾服(テールコート)
正礼装とは、最も格式が高い装いを意味する礼服のことです。正礼装にはモーニングコート・燕尾服があります。
結婚式などの慶事で正礼装をする時は、午前中~午後6時頃(冬場は5時頃)まではモーニングコート、それ以降は燕尾服がふさわしいといわれています。下記で、それぞれさらに詳しく解説します。
・モーニングコート

昼間の慶事に着用する正礼装です。結婚式などのシーンでは、新郎・両家の父親などが着用します。弔事では、一般的には喪主にあたる人の服装となります。
ジャケットは1つボタンで、裾はカーブしながら長く伸び、後ろ着丈は膝くらいの位置まであります。襟はピークドラペルが基本。コールパンツと呼ばれる、黒とグレーの縦じまのスラックスなどを合わせるといいでしょう。
・燕尾服

夕方から夜に着用する正礼装であり、テールコート・ホワイトタイともいいます。モーニングコートと同様に、結婚式などのシーンでは、新郎・両家の父親などが着用します。
燕尾服と呼ばれる由来は、ジャケットの正面側の着丈が短い一方で、後ろの裾が長くて真っすぐにカットされているところが、ツバメの尾に似ていることからだといわれています。飾りボタンは左右に3つずつで計6つ、襟はピークドラペルです。
スラックスは、ジャケットと同じ生地で作られているものが多いです。両脚の側面には、側章(そくしょう)と呼ばれる飾りテープが2本ずつついているのが特徴です。
準礼装│ディレクターズスーツ・タキシード
準礼装とは、正礼装に準ずる礼装を指します。こちらも主に昼間用としてディレクターズスーツ、夕方から夜用としてタキシードがあります。
・ディレクターズスーツ

昼間の慶事に着用する準礼装のことであり、結婚式に招待されたゲストが着用するスーツの中で最も格式の高い礼装となります。主賓として出席する場合に適しているでしょう。元々、欧米で重役クラスのビジネス服として流行したスタイルです。
黒無地のジャケットに、グレーと黒のストライプのスラックスを合わせるのが主流です。なお、ディレクターズスーツのスラックスは前述のモーニングコートと同じものを、そしてジャケットはこの後解説するブラックフォーマルスーツのものを使用できます。
・タキシード

タキシードはブラックタイとも呼ばれ、夕方から夜の結婚式や、夕食会などに招待された際に着用する準礼装のことです。
ただし最近では、時間帯問わず新郎の服装としても人気です。海外での本来のルールとは異なりますが、時代を経るにつれて、徐々に日本独自の文化ができていったとも考えられるでしょう。
ジャケットの襟は、ショールカラーと呼ばれるヘチマ型、またはピークドラペルで、シルクやサテンなどの光沢のある生地がかぶせられています。ジャケットと共布で、側章が入ったスラックスを合わせます。ベストかカマーバンド(幅の広い腰帯)、蝶ネクタイと共に着用しましょう。
正礼装や準礼装は上質な素材を使用している分、比較的、価格が高めなので、シーンに合わせてそろえるのが難しい場合もあるでしょう。着用した後のお手入れなども考えると、レンタルサービスを活用してもみるのも一つの手段かもしれません。
手軽に品格ある装いに
略礼装│ブラックフォーマルスーツ(ブラックスーツ)・ダークスーツ

略礼装は、平服とも呼ばれ、ブラックフォーマルスーツ・ダークスーツの2種類があります。正礼装・準礼装とは異なり、昼夜の区別はありません。
・ブラックフォーマルスーツ
無地で漆黒色のスーツです。ビジネス用の黒いスーツとは、黒の深さや、生地の上質さなどが異なります。ブラックスーツと呼ばれることもあります。結婚式にゲストとして招待された時など、幅広いシーンで活用できます。
慶事の際は、白シャツにシルバーなどのネクタイを合わせます。さらに同じくシルバーカラーのベストを着ると、よりドレッシーな印象になるでしょう。
また、弔事の際、特にお葬式ではブラックフォーマルスーツを着るケースが多いです。最近では喪主や遺族も、正礼装ではなく略礼装のブラックフォーマルスーツを着ることが増えています。
・ダークスーツ
ビジネスシーンで使用するスーツの中でも、ダークネイビーやチャコールグレー、黒などの落ち着いた色味のものであれば、略礼装として認められています。友人や同僚として結婚式に招待された際や、子どもの入学式などにも使用できます。
特に結婚式の際は、シルバーや白のネクタイ、ポケットチーフなどで華やかさを演出し、仕事着感が出ないように注意しましょう。
なお弔事では、特にお通夜の際は、ブラックフォーマルスーツよりもダークスーツが望ましい、という説もあります。これはブラックフォーマルスーツだと「急な知らせなのに準備ができるということは、不幸に備えていたようだと思われる」という理由からです。
ただ近年では、お通夜まで時間が空くというケースも多いため、どちらのスーツでも着用可能という風潮が強まっているようです。
このように、さまざまなシーンで活用できるブラックフォーマルスーツやダークスーツ。しっかりしたものを持っておくと安心でしょう。
1着は持っておきたい!
ビジネスシーンでも使える!
礼服を購入する時のポイント
ここでは、礼服を購入する際に念頭に置いておきたいポイントを紹介します。
スーツには春用・夏用などがありますが、まずはオールシーズン着られるものを用意しておくのが、汎用性があっておすすめです。
また、礼服は着用機会があまり多くないため、頻繁な買い替えをする人は少ないです。ですから流行に左右されないデザインを選んでおくと安心です。そして体形が多少変わっても対応できるような、ゆとりのあるシルエットのものを選んでおくと、長く着用できます。
礼服は生地や仕立て、販売店によって、価格帯に幅があります。安価すぎる礼服は、風合いや見た目に上質さが感じられないケースも多いため、あまりおすすめできません。
ただ、体形や立場の変化によって買い替えがしやすいように、最初から高価すぎるものを選ばないことも大切です。5万円前後が1つの目安となるでしょう。
最後に、礼服とビジネススーツ、特にブラックフォーマルスーツと黒いビジネススーツは、細部の仕様や素材に違いがあるので、兼用するのではなく分けて用意しておくよう推奨します。
【記事まとめ】スーツと礼服の違いを正しく理解しよう
スーツにはビジネススーツやリクルートスーツなどさまざまな種類があり、礼服もその一種となります。
礼服の中でも特にブラックフォーマルスーツと黒のビジネススーツは混同されやすいですが、礼服はより深みのある黒さが印象的で、光沢を抑えた生地を用いられているケースが多いです。
礼服は冠婚葬祭など大事なシーンで着用するものなので、場にふさわしい製品の選択と、着こなしを心掛けることが大切です。また頻繁に買い替えるものではないので、失敗はできれば避けたいところですよね。
そこで購入の際には、店舗のスタッフに相談しながら決めることをおすすめします。AOKIの各店舗では、知識豊富な専門スタッフが、お客さまのニーズを丁寧にヒアリングしながら、最適な1着をご提案します。ぜひ足を運んでみてください。