略喪服とは?喪服との違いや着こなしを男女別に解説
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「略喪服」は、日常的な弔事やカジュアルな場面で着用できる喪服です。
聞き慣れない方も多いかもしれませんが、喪服には格式の違いがあり、間違えるとほかの参列者から浮いてしまうこともあります。
本記事では、略喪服の基本マナーや選び方、着用のポイントを詳しく解説します。
いざというときの備えとして、ぜひ参考にしてみてください。
略喪服とは
略喪服とは喪服の中でも最も格式の低い服装で、ビジネススーツやワンピースなどの中から弔事に適した服装のことをいいます。
弔事の席へ参列する際に、「平服で」と言われた場合に着用する服が、略喪服です。
略喪服について、詳しく見ていきましょう。
略喪服と喪服の違い
略喪服は、喪服をカジュアルダウンしたものです。
喪服と大きく異なる点は、略喪服はビジネススーツやワンピースなどで、弔事以外でも日常生活の中で着用できます。
一方、喪服は弔事に参列する際のみ着用するもので、普段の生活では着用するシーンがありません。
スーツでなくても問題なく、色もダークグレーや濃紺など地味な色であれば、必ずしも黒である必要はありません。
ただし、普段着といってもカジュアルなものではなく、きれいめで落ち着いた服装であることが大切です。
落ち着いたダークカラーでも、光沢があるものやデザインが華やかなものは避けましょう。
略喪服を着用するシーン
略喪服は、一般的に以下のような場所で着用します。
- ・通夜・仮通夜
- ・お別れ会・しのぶ会など
- ・家族葬などで平服が指定されたとき
- ・三回忌以降の法要
- ・通夜・告別式以降での自宅への弔問
上記のようなシーンで着用する略喪服がどのようなものなのか、男女別と子ども服について具体的に解説します。
女性の略喪服とは
女性はビジネススーツやワンピースが、略喪服として適しています。
黒や濃い色を基調としたシンプルなデザインを選ぶことで、正式な場でも失礼にならない服装になります。
スーツはパンツスタイルでも問題なく、ワンピースに羽織るのはジャケットのほかにカーディガンも可能です。
男性の略喪服とは
男性の略喪服はスーツですが、礼服ではなく黒や濃紺などのダークスーツです。
ネクタイも黒を使うので、仕事の帰りにそのまま訪問する際に、明るい色のネクタイを着用している場合は黒のネクタイに付け替えましょう。
黒いネクタイは100円ショップやコンビニでも取り扱いがあるため、急な場合でも用意しやすいでしょう。
子どもの略喪服とは
子どもは喪服の格式が分けられていないので、黒や濃紺などダークカラーの落ち着いたデザインの服を選ぶとよいでしょう。
中学生や高校生など、制服がある学校であれば制服が正装となります。
明るい色のネクタイやリボンがついていても問題なく、外す必要はありません。
乳幼児は黒い服が少ないため、ベージュなどの落ち着いた色のものを着用しましょう。
できるだけキャラクターなどの装飾がない、シンプルなものが好ましいでしょう。
略喪服は失礼にあたるか
略喪服は、急な訃報に駆けつける際に着用する服装であり、失礼にあたるものではなく、故人やご遺族への敬意を表す装いとされています。
特に通夜では、近年は喪服で参列する方も多く見られますが、以前は「喪服を準備して着てくることは、亡くなるのを待っていたように見える」と考えられていたため、略喪服で参列するのが一般的なマナーでした。
喪服の格式
喪服の格式は3種類の格式に分けられ、以下の表にまとめました。
| 格式 | 対象 | 服装 | シーン |
| 正喪服 | 喪主・三親等まで | 男性:モーニングコート 女性:和装 ブラックフォーマル |
通夜・葬式・三回忌までの法要 |
| 準喪服 | 喪主・親族・参列者 | 男性:ブラックスーツ 女性:ブラックフォーマル |
通夜・葬式・法要 |
| 略喪服 | 参列者・学生・子ども | 男性:ブラックスーツまたはダークスーツ 女性:スーツ・ワンピース 学生は制服 |
通夜・三回忌以降の法要・平服指定 |
それぞれの格式について解説します。
喪服には3つの格式がある
喪服には3段階の格式があり、もっとも高いものが正喪服です。
正喪服は喪主と三親等までの親族に限られている上、喪主や親族でも必ずしも正喪服に限られているわけではないため、着用する機会がかなり少ないでしょう。
正喪服の次に位置づけられるのが準喪服であり、一般的に「喪服」として認識されているのは、この準喪服である場合がほとんどです。
お通夜やお葬式、法要などでよく見かけるブラックフォーマルが準喪服で、親族や参列者のほかに喪主も着用できる格式です。
3種類の喪服の中で、もっとも格式が低いものが略喪服です。
略喪服は弔事専用の服ではなく、普段着用するワンピースやビジネススーツを指します。
落ち着いた色合いやシンプルなデザインのものを選ぶとよいでしょう。
正喪服
喪主や三親等以内の親族が着用するものが正喪服で、そのほかの親族や参列者は準喪服が一般的です。
最近では喪主も準喪服の着用が一般的となり、正喪服を以前ほど見かけなくなってきました。
和装を持ち合わせていないけれど着用を検討している場合は、葬儀社にレンタルを依頼する方法があります。
男性の正喪服
男性正喪服で和装の場合は、紋付羽織袴です。
羽織は黒の羽二重で、両袖と両胸、背中に家紋が入った五つ紋です。
洋装の場合はモーニングコートとなり、ネクタイやベスト、靴下などの小物類も黒で統一します。
女性の正喪服
女性の正喪服は、格式の高いブラックフォーマルが基本です。和装も正喪服として認められます。
ブラックフォーマルは胸元が開いたデザインなど、肌の露出が多いデザインは避けて、品のあるものを選ぶようにしましょう。
一般的に夏でも長袖を着用しますが、会場以外では暑さ対策ができるようインナーを工夫するのがおすすめです。
準喪服
お通夜や葬儀など、弔事でもっとも広く着用されている喪服が「準喪服」です。
一般的には「喪服」や「ブラックフォーマル」と呼ばれる服装で、参列者はもちろん、親族や喪主であっても準喪服を着用すればマナー違反になる心配はありません。
男性の準喪服
男性の準喪服として基本となるのは、ブラックスーツです。
ベルトや靴などの小物も、光沢のない素材を選び、黒以外の色は身に着けないようにしましょう。
シャツや靴下も白や黒のシンプルなものに統一すると、全体の印象が整い、喪服としての礼儀を守ることができます。
女性の準喪服
女性の準喪服は一般的にブラックフォーマルと呼ばれる服装で、パンツタイプやワンピース、ツーピースなどがあります。
バッグや靴も黒ですが、光沢がある素材や、華やかな装飾があるものは避けましょう。
小物類の選び方については、この後詳しく解説します。
喪服を着用するときに必要な物

喪服の着用では、バッグや靴などさまざまなものが必要となります。
慶事と違い弔事は突然起こるので、早めの準備が大切ですが、いざ購入しようとすると、どのようなものを選べばいいのか迷うことも多いでしょう。
喪服に合わせる小物類の選び方や、間違えやすいマナーについて解説します。
バッグ
光沢のない布製で、色は黒が基本です。
革製品は殺生をイメージさせるほか、エナメルなどの光沢がある素材のものもマナー違反となります。
黒のリボンなどワンポイント程度の装飾は問題ありませんが、ビーズやスパンコールなどを使った装飾は避けましょう。
なお、男性はバッグを持たないのが基本とされます。
ハンカチや数珠など必要最低限のものは、スーツの内ポケットに収めるか、必要に応じてシンプルなサブバッグを使用すると良いでしょう。
靴
葬式では、男女ともに落ち着いた黒の靴が基本です。
男性の場合は、光沢を抑えた黒の革靴を選びます。
デザインは内羽根のプレーントゥなど、装飾のないものが適しており、エナメルやスエードなどカジュアルな素材は避けるようにしましょう。
女性の場合は、光沢がある素材を避け、装飾のない黒色のパンプスを選びます。
バッグでは革製品がマナー違反になりますが、靴は本革でも問題ありません。
ヒールは高すぎるものやヒールがないものは避け、3㎝から5㎝程度の高さが望ましいでしょう。
装飾やストラップベルトのないプレーンなタイプを選ぶと安心です。
袱紗
袱紗とは、香典を包む布のことをいいます。
風呂敷のように包むタイプのものと、二つ折りで挟むタイプのものがあり、手軽に使えるのは挟むタイプです。
また、袱紗には弔事用と慶事用があり、弔事用には寒色系のカラーを選びましょう。
ただし、紫は弔事・慶事のどちらにも使えます。
数珠
数珠は仏式のお葬式や法要で、読経や焼香の際に使用します。
本式と略式があり、本式は宗派により違いがありますが、略式は宗派に関係なく使えるので、弔事に参列するために購入するなら略式がおすすめです。
貸し借りはマナー違反となるため、家族内でも貸し借りは控え、一人ひとりが持っておきましょう。
ハンカチ
喪服に合わせて持つハンカチは、基本的に白または黒の無地が適しています。
落ち着いた色合いであれば、同色のレースや控えめな装飾も問題ありません。
ただし、派手な柄や目立つロゴが入ったものは避けるのがマナーです。
ハンカチはちょっとした小物ですが、弔事では故人や遺族への敬意を示す大切な役割を持っています。
そのため、選ぶ際には色やデザインに十分配慮しましょう。
靴下・ストッキング
男性の靴下と女性のストッキングは、一年を通して黒を使います。
ストッキングは30デニール以下が一般的です。
しかし、妊娠している人や高齢の人は体が冷えると大変ですので、周囲と相談してタイツを使うとよいでしょう。
降雪する地域など真冬の気温が特に低いエリアでは、60デニールを目安に厚手のストッキングを使うことも問題ありません。
傘
意外と見落としがちですが、喪服で外出する際に必要になるのが傘です。
急な雨でも慌てずに対応できるよう、事前に準備しておくと安心です。
喪服に合わせる傘の色は、男性・女性ともに黒が基本です。
黒い傘が手元にない場合は、濃紺や茶、ダークグレーなど落ち着いた色の無地のものを選びましょう。
柄物や明るい色は避けるのがマナーです。
パールネックレス
女性のブラックフォーマルには、パールのネックレスを合わせるのが一般的です。
弔事で用いる場合は、ホワイトまたはブラックの一連ネックレスを選びます。
ピンクやイエローなどのカラーパール、淡水パール、または二連以上のネックレスは華やかすぎるため避けましょう。
さらに、ホワイトやブラックでも、8ミリ以上の大きさのパールは控えるのが無難です。
略喪服など喪服のマナー
喪服や、喪服に合わせる小物類には細かい決まりやマナーがあります。
喪服を購入する際には、しっかりと確認しておきましょう。
スカートの長さ
スカートは膝下5cm程度の丈が適切ですが、膝が隠れる長さであれば少し短めでも問題ありません。
落ち着いた印象を保つため、スカートの丈は膝まわりをきちんと覆うことが大切です。
最近では椅子に座ることが多いため、膝が隠れていれば問題ない場合がほとんどです。
しかし、床に座る場面や正座をする場面がある場合には、膝下5cm程度の長さがあると安心でしょう。
袖の長さ
男性の場合は、ワイシャツは長袖を選ぶのがマナーです。
袖口はジャケットの袖から1㎝程度出る長さが望ましく、上着を脱いだときもきちんとした印象を保てるようにしましょう。
女性の場合は、ワンピースの袖は七分袖か五分袖がよいでしょう。
一般的な参列者の場合は上着を脱ぐ機会はほとんどありませんが、親族や喪主はお茶を出したり洗いものをしたりする際に上着を脱ぐことがあります。
上着を脱いだときに支障がない袖の長さを考えると、七分袖が安心かもしれません。
アクセサリーの色や形
弔事では華やかさを避けるため、アクセサリーは原則として黒に統一し、最小限にとどめるのがマナーです。
長い髪をまとめるゴムやバレッタなど、必要なものだけ使用しましょう。
指輪は結婚指輪のみが許され、それ以外の指輪は避けるのが基本です。
アクセサリーは原則控えますが、パールのネックレスとイヤリングまたはピアスは例外として使用できます。
ネイルについては、派手なものは避けましょう。
ジェルネイルの場合は、上からベージュや淡いピンクを重ね塗りして調整できます。
また、靴を脱ぐ場面がある場合はペディキュアも事前に落とすなどの配慮が必要です。
略喪服の選び方

喪服や礼服は、百貨店や専門店のブラックフォーマルコーナーで購入すれば、どれを選んでもほぼ問題ありません。
しかし、略喪服は選び方に迷うこともあるでしょう。
ここでは、略喪服の購入先や注意点など、失敗しないための選び方をご紹介します。
パンツスーツはNG?
略喪服では、パンツスーツも問題なく着用できます。
近年では略喪服に限らず、ブラックフォーマルでもパンツタイプが販売されており、マナー違反ではなくなってきています。
正喪服・準喪服ではブラックフォーマルに分類されるものに限りパンツタイプの着用が可能ですが、略喪服では一般的なパンツスーツが着用できます。
略喪服はどこで買う?
略喪服として使用できる服を購入する方法は、大きく分けて「実店舗」と「オンラインショップ」の2つがあります。
実店舗では、サイズ感や似合うかどうかを確認して購入できるのが魅力です。
百貨店にはさまざまなブランドがそろっており、価格帯も幅広く、準喪服はブラックフォーマル売り場、略喪服は各ブランドの店舗で購入できます。
紳士服・スーツ専門店では、準喪服・略喪服が同じ店舗内に並んでいるため、比較して選ぶことが可能です。
ショッピングモールは、スーツやワンピースを普段あまり使わない場合や、価格を抑えたい場合におすすめです。
また、リサイクルショップでも販売されていることがあります。
サイズやデザインは限られますが、思わぬ掘り出し物に出会えることもあるでしょう。
気に入ったブランドで購入すれば、普段使いもしやすく、お得に選べます。
購入するときの注意点
略喪服はブラックフォーマルのようにセットアップになっているとは限らないため、選び方を押さえておくことが大切です。
男性の注意点としては、ジャケットとスラックスをそろえる必要があり、上下別のものよりもセットアップスーツを選ぶとよいでしょう。
白無地のシャツが必要ですので、併せて購入しておくと安心です。
女性のスーツやワンピースはシンプルなものばかりとは限らず、装飾がついているものも少なくありません。
華美なものは避けて、シンプルな形の黒スーツやワンピースを選ぶことがポイントです。
スカートの長さにも注意が必要で、試着して長さを確認しましょう。
スーツの場合はブラウスなどのインナーが必要ですが、色は黒または白のシンプルなデザインを選んでください。
まとめ
略喪服とはどのようなものか、また格式や選び方の注意点などを詳しく紹介しました。
若い方は喪服の必要性をあまり感じないかもしれませんが、急な訃報に備えて、社会人になったら準備しておくことがおすすめです。
喪服を用意しておくことで、いざというときも落ち着いて対応できます。
すでに喪服を購入している方も、仕事帰りにお通夜に参列する可能性を考え、略喪服を勤務先のロッカーや自宅に用意しておくと安心です。
購入する時間が取れない場合も考えられるほか、マナー違反をしてしまう心配もあるため、余裕を持った準備が重要です。
いざというときに慌てずに対応できるよう、早めの準備と事前のチェックを心がけましょう。
本記事を参考に、略喪服の準備を少しずつ進めてみてください。
自分に合った服装を選び、安心して参列できるようにしておくことが大切です。


